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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)4126号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人泉信一の弁護人前堀政幸の上告受理申立理由および上告趣意について。

所論は、信用金庫法による信用金庫は経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律(以下単に整備法という)別表乙号一九ノ二に掲げられているけれども、同金庫は同法二条にいう会社、組合又は此等に準ずるもののいずれにも当らず、同金庫の別表乙号所掲の根拠がないから、信用金庫の役職員にかかる贈収賄は同法二条、五条によって処罰さるべきものではなく、また原判決が「信用金庫の業務は少くとも独占又は統制業務に準ずるものとして取扱う必要ありとし別表乙号の一九の二に法定されたものである」と説示したのは、同法二条に規定のない事項を認めたものであって、誤りであるというにある。

しかし、信用金庫法による信用金庫は、特別の法令に依り設立された会社ではないが、信用金庫法という特別の法律に依り設立された法人(同法二条)であって、前記整備法二条にいう「特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル会社……ニ準ズルモノ」に当るものとして別表乙号に掲げられていると解するのが相当である。実質的に見ても信用金庫法によれば、信用金庫は事業免許、業務運営等につき大蔵大臣の監督指導に服するものであることは明かであるから、国家の監督統制指導を受ける「特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル会社」に準ずる性質を備えた経済団体であるということができる。原判決が所論摘示のように説明したことは整備法の解釈として誤りがあることは所論のとおりであるけれども、信用金庫が別表乙号に掲げられた趣旨は前説明のごとくであるから、原判決が整備法二条を適用すべきものとしたことは結局正当であって、原判示の前記違法は原判決に影響を及ぼすものではない。従って原判決を破棄する理由とするに足りない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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